第10回 金屋町 伊藤英三様宅「和楽器を自由に楽しむ」

~邦楽普及団体「えん」楽々庵~

金屋町は、和歌山県の北西部、有田郡のほぼ中央に位置する山地です。柑橘類や野菜の栽培に適した温度に恵まれた気候で、秋から冬にかけては山一面に黄色くなったみかんが、山の段々畑にたわわに実ります。鎌倉時代初期に活躍した高僧で月をこよなく愛し、「ふるさとの やどにはひとり 月やすむ 思うもさびし 秋の夜のそら」など、月の歌を数多く詠い「月の歌人」として有名な明恵上人は現在の金屋町歓喜寺で生まれました。
箏(こと)のお師匠さんである伊藤和子さんは、邦楽全般をより親しみやすい形で広く一般の方にも知っていただきたいと1988年に非営利の邦楽普及団体「えん」を設立。全国学生邦楽フェスティバルを中心にコンサートや箏、邦楽の演奏会、お箏教室などを開催されています。
金屋町に引っ越したのは5年前。きっかけは箏のお師匠さんである箏曲家北川芳能氏の遺品をご家族から寄贈され、その整理から始まりました。これが「春の海」等で有名な近代邦楽の祖宮城道雄氏の未発表作、日本でも2本しか現存が確認されていない245cmもある十七弦の箏など、研究者から「日本の近代音楽史の空白を埋める貴重な発見。」といわれるほどの品々で、みかん箱7箱あまりの資料と天井を突き抜ける十七弦を見学、取材に全国から研究者、マスコミが大阪の3LDKのマンションに来訪される機会が増え、「ゆったりとした場所に資料を保管し、ゲストを招きたい。」と考えたことがきっかけです。ご主人が和歌山県出身ということもあり、雑誌で金屋のこの物件を見つけた時は即決で購入を決めたそうです。


師匠の遺品の17弦の琴は普通の琴の1.5倍も長さがあります。

今は、週末を金屋ですごし、楽々庵としてコンサート活動や学生の合宿への宿の開放などを行っています。昔ながらの和室は障子をはずせばぶち抜きの大広間になるので、多いときは120人もの人がこの楽々庵の一間に集まるそうです。
街道沿いの高台に立つ家は、夏も涼しく、縁側 からの景色は春は菜の花、秋はコスモスの野原が美しく心休まります。休日には必ず友人、知人や邦楽の仲間が金屋を訪れ、田舎らしい風景と静かさに満足して帰ってゆかれるそうです。
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邦楽の演奏家やファン学生が集まります。

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